2011年11月01日

不可思議なイベント・その4

10/22 某所某イベント その4

ステージで何が行われているのか、見えない僕にはむろん知る
すべがなかった。かなり前にギターがサウンドチェックをして
いたから、楽器のセッティングはもう終わったと思っていたが、
違ったのだろうか。美大関係者のイベントだけに、凝りまくった
舞台装置をいちいち入れ替えたりして、見えている人は、時間が
かかってもそれなりに納得しているのかも……考える以外にする
ことがないのでいろいろ考えてはみるが、周囲の客の様子からは、
特別なことが起こっているような気配はまったく感じられない。

ナゾの10分が経過した。出番は8時過ぎと言っていたKは、
かろうじて9時手前の8時55分にステージに登場する。僕が
こんなに細かく時間をチェックしたのは、メニューに「注文の
料理が30分以内に出なければ代金はとらない」と明記している
某居酒屋で、きっちり値引きさせたとき以来だ。

主催者の一人であるKにとっては、1時間半とか25分+10分とか、
もろもろの不可思議に対して何か述べるチャンスだ。しかし
彼女は、「お待たせしました」の一言であっさり演奏に移った
唖然とするのにも疲れた僕の口元は、うすら笑いを選択する。

さて、この先僕がどれだけ待たされるんだろうと意地悪な期待を
ふくらませている方には申し訳ないが、僕が過ごすことになる
不可思議な時間は、、あとほんの数分である。ただその数分が、
もしかしたらこのイベントの全てを象徴していたのかもしれない。

Kの歌と演奏そのものは、決して期待はずれではなかった。
1曲めが終わると、Kとピアニストによる長いMCが入る。次の
曲がイベントの目玉、この日のためにピアニストが書き下ろした
作品だったからだ。いかにもしゃべりなれない、モタモタした
MCだが、それはしかたがない。問題はその曲が終わったあとだ。

「ここで準備がありますので、しばらくお待ちください。」
この期におよんで、である。そして、オリジナルの楽器なのか、
音の出るインスタレーションなのか、セッティングの間、沈黙の
数分が過ぎた。

さっきの長いMCの半分をここに回せば、客の余計な待ち時間を
減らせるなんてことは、ちょっと考えればわかる。沈黙の数分は、
ステージ上のだれ一人としてそれを考えなかったこと、ひいては、
イベント関係者のだれ一人として、「段取り」という発想を持って
いなかったことを示しているのではないか。もちろん根拠のない
失礼千万な憶測であり、またそれだけで、この日の異常な時間の
流れを説明しきれるものでもないが、とりあえず口を開けすぎて
はずれかけたアゴを元に戻す役には立った。

Kたちの演奏は3曲だけで、沈黙の数分を含めても、転換に
かかった35分より短かった。
「最後のパフォーマンスの前に、また転換のお時間を……」
聞いて、僕は席を立った。

念のため繰り返すが、これは目が見えず、本来の開演時刻に少し
遅れ、最後のパフォーマンスを待たずに会場をあとにした僕が
体験したことである。だから、僕が着く前に、あるいは僕が
帰ったあとに、もしくは見える人には見える貼り紙で、きちんと
した事情説明やおわびが行われていたとしたら、僕はそれらを
すべてすり抜けたわけだ。その結果、イベントについて不当に
悪い印象を、この文章が与えたとしたら、本当に申し訳ない。

ところで、イベントから1週間後、Kからメールが来た。「御礼と
謝罪」と題されたそのメールの中で、これまた不可思議なことに、
謝罪の言葉は「お礼が遅くなってごめんなさい」の一言しかない。
ただ、もちろん開始時間の遅れや長すぎる転換には触れていて、
「反省点が山ほどあります」と書いている。
あの転換が意図的に引き伸ばしたものではなかったこと、そして、
あの流れが普通ではないという認識はあることがわかり、
ちょっと安心した。
posted by しんどう at 22:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 音ゲル係数

2011年10月31日

不可思議なイベント・その3

10/22 某所某イベント その3

今度こそ定刻に――その瞬間に時刻を確かめたわけではないが、
おそらくほぼ7時30分ちょうどに、ライブはスタートした。
そこから僕たちは、ひたすら、ベタッとしたノイズを聴かされる
ことになる。

ここでノイズというのは、演奏がヘタクソなため、それが騒音に
聞こえるという意味ではない。意図してノイズを「演奏する」
バンドなのだ。それも、ジワジワ変化はするものの、メリハリは
まるでない、本当にベターッとしたノイズである。少なくとも、
僕の好みではなかった。

あのノイズに浸って私服を感じていた、あるいはそのなんらかの
メッセージに共感して高揚していたファンにとっては残念な
ことに、しかし僕にとっては幸いなことに、バンドの演奏はKの
予告より10分短く、20分で終わった。MCなしにいきなり
音から入るという演出を優先させたのなら、主催者からの事情
説明とおわびを入れるのは、当然このタイミングだ。

たしかにそれに類する言葉は、バンドの演奏後のMCの中に
あった。
「時間がオシたりして、申し訳なかったんですけど……」
1時間半客を待たせたことは、「〜たりして〜けど」のDAIGO的
コメントで済まされる問題なのか? また吃驚だ。まあ、原因と
なったトラブルは、バンドの責任ではないということなのだろう。
でも、もし機材の不具合で、いまのバンドの演奏に支障が生じた
のだったら、これをカットして予定通りの時間に始めてくれれば
よかったのにと、僕は心の中でつぶやいた。

別の男性が出てきて、次のダンスのパフォーマンスのために
ステージ転換を行うので、しばらくお待ちくださいとアナウンス
する。だれかはわからないが、当然主催者側の人間のはず。でも、
遅れについての言及は一切ない。

さて、ステージ転換といえばたいがい10分程度、Kの言った
「演奏時間30分」はそれを含めたものだったのかと考えたが、
これは甘かった。8時を回ってもパフォーマンスが始まる気配は
ない。途中、作業中に何かが起こって、オーッという歓声が
上がる。だれかが、「いまので会場がひとつになったね」と。
いやいや、ひとつにはなっていない、僕は完全にオイテケボリだ。

BGMが変わり、ダンスが始まったことがわかる。転換に
かかった時間は20分。そしてダンスはわずか10分で終わる。
また吃驚……しかし、吃驚はここまでだった。

Kがステージに現れ、次は自分たちの演奏だけれども、また
転換があるので、スタートは45分になる、と告げる。時刻は
8時20分、つまり転換に25分かかるというわけだ。CMの中に
申し訳のように番組がはさまるテレビ東京の深夜枠だって、
これほどひどくはない。吃驚を通り越して、唖然である。

会場では飲み物を売っている。缶ビール350円は、いつもの
僕ならすでに2本飲み干している値段だが、この日にかぎっては
まったく飲みたくない。この場で飲むビールがさぞかし不味い
だろうと創造されたし、万一このデタラメな進行が、飲み物を
売らんがための不器用な戦略だとしたら、絶対にノッてやる
ものかという思いもあった。

こんな僕のイライラをよそに、「このマッタリ感がいいね」なんて
感想も聞こえてくる。アジア時間だ、ここには東南アジアの
時間が流れているんだ、と思った。ただし、この認識は伝聞に
基づくものだから、東南アジアの方に失礼にあたるようなら
おわび申し上げる。

そして長い長い25分が経過し、8時45分となった。
演奏は始まらなかった。

    (to be continued)

posted by しんどう at 11:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 音ゲル係数

2011年10月30日

不可思議なイベント その2

10/22 某所某イベント その2

(前回の超あらすじ――苦労の末たどり着いたイベントの開演が
1時間半も遅れると知り、会場近くで時間をつぶすことに。)

サンドイッチ一つとスープで1時間以上もたせるのは、かなり
難しい。僕の場合、本や雑誌に頼るわけにいかないし、携帯音楽
プレイヤーを持ち歩く習慣も、実はない。滞りがちなブログに、
次は何を書こうかなど、とりとめもなく思い巡らせて、遅々たる
時間の流れをやり過ごした。

開演は1時間半遅れの7時半だけれど、7時には開場すると
聞いたので、7時15分くらいにギャラリーに戻った。1階では
1週間にわたる展示、地下でそのオープニング・イベントを、
という趣向である。外で待っている人たちがいて、一瞬まだ
開いていないのかと思ったが、さすがにそうではなく、一人が
階段の下まで連れていってくれた。

受付の女の子が、とても明るく「入場料1000円いただきます」
と声をかけてくる。吃驚と書いてびっくり……。僕は、「大変
お待たせして申し訳ありませんでした。入場料1000円、
いただけますでしょうか」的な口上を予期していたのだ。後に、
イベントにかかわる仕事をしている友人とこの話をして、
「自分たちなら、場合によってはお金をいただかないかも」
というところで意見が一致した。

とはいえ払わないつもりもなかったので、千円札を渡しながら、
一応「なんで1時間半も遅れたの?」と聞いてみた。「なんか、
機材関係のトラブルらしいです」と、返事はあくまで明るく、
すみませんの一言はない。

美大関係者のイベントなので、受付その他、後輩の大学生などが
手伝っているのだろう。彼女らにしてみれば、自分たちは
お待たせした側ではなくまたされた側、アガリが1時間半遅れた
被害者だという意識なのかもしれない。それでもやはり、吃驚だ。

展示にも参加している主催者の一人であり、僕が唯一知っている
出演者のKが、僕を見つけてやってきた。イニシャルを使うと、
とたんに文豪のエッセイっぽくなることに今気づいたが、それは
さておき、彼女のほうも僕が現れたことに吃驚したにちがいない。
彼女にはそれまで一度しか会ったことがなく、一斉送信で
送られてきた案内に返信もしていなかったからだ。白杖を持って
いなかったら、気づかれなかった可能性もある。

「真藤さん、来てくださったんですね。ありがとうございます」
と、K。ライブ案内のメールは送っているので、名前は覚えて
いてくれた。
「盛況だね。それにしても、どうして1時間半も遅れたの?」
「本当に申し訳ありません」と初めてのおわびの言葉だが、
事情説明はない。
「ライブは最初のバンドが30分、ダンスが10分、転換のあとが
私の出番なので、8時すぎになるんですが……。」
「そうか、じゃ、あとの予定は完全にアウトだな」と、これは
言わずもがなの意地悪。でも、ちょっとどころでなくそんな
気分だった。ただこの時点での僕の計算は、ダンスのあとに
10分の転換があって、Kのパフォーマンスは8時20分ごろに
始まり、9時前には終わるというものだった。最後の出演者まで
含めて、ちょうど2時間くらいのイベントなのだなと考えていた。

「出演順もお知らせすればよかったですね。どうなさいますか?」
「ここまで待ったんだからもちろん聴いていく。出演順なんて、
6時に始まっていれば問題にならなかったんだけどね。」
「本当にすみません。」
二度目のおわびは、やや無理やり言わせた漢字だ。

Kとのやりとりを延々と紹介したのは、別に文豪のエッセイを
意識したわけではない。少なくとも彼女は、謝罪しなければと
いうまともな感覚も、持ち合わせていることを示して
おきたかったのだ。そうでないとこの話の全体が、夢の中か、
異次元世界か、もしくは東南アジアでのできごととしか、
受け取ってもらえなくなる。
しかしおかげで、ライブが始まる前に予定字数をオーバーして
しまった。完結までいま少しお待たせすることを、心からおわび
申し上げる。

   (to be continued)

posted by しんどう at 13:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 音ゲル係数