2011年06月04日

五七五は8ビート

すいすい句ろんーーこれも俳句だ 2

★ 詰られて23時の生ビール  粋酔

 俳句といえば五・七・五、だれもが小学校で習うはずだ。
 上掲の句も、ひらがなで書いてみると、
「なじられて・にじゅうさんじの・なまびーる」
「じゅ」は2文字だが音としては一つなので、ぴったり
五・七・五の十七音になっている。

 ただこの五・七・五は、川柳もそうだし交通標語もそう、
気が付けば、日本中どこもかしこも誤・七・五だらけである。
なぜ日本人は、このリズムがそんなに好きなのか。

 国語学的にはまだいろいろ議論があるようだが、音楽的には
明快な答えが出ている。
 五・七・五は「4拍子8ビート」なのである。

 そもそも日本人は、「2拍子系」の民族らしい。そして、
「強・弱・強・弱……」とリズムをとる。これは、社内旅行の
宴会で、オヤジたちが上司の歌に、つい「打って・揉み手・
打って・揉み手」という手拍子をつけてしまうことからもわかる。

 したがって、4拍子の場合は、1拍めと3拍めが強い拍、
2拍めと4拍めが弱い拍となる。さらに8ビート、すなわち
1拍を8分音符2コに分けた場合も、前が強く後ろが弱くなる。

 8ビートの1小節を「タカタカタカタカ」と書いたとすると、
まず前の8分音符「タ」が強く、後ろの「カ」が弱い。そして、、
4拍子の1拍めと3拍めにあたる1つめと3つめの「タ」は、
超強い、ということになる。
 ちなみにジャズのリズムのとり方はマッタク逆で、「タ」より
「カ」のほうが強く、また4拍子の2拍めと4拍めが強い。
つまり、日本人のリズム感の対極にある音楽といえるわけだが、
そんなジャズを、なぜよりによって尺八などという楽器で?と
聞かれたら、ほっといてくれと答えるしかない。

 さて、われわれが俳句を超え二打して読むと、知らず知らず
この「4拍子8ビート」にはめ込んでしまう。五・七・五の
それぞれを1小節として、音が足りない分は休符で埋め、つまり
間をとって、8ビートを刻むのである。

 たとえば上刑の句なら、たいがいの人がこんなふうに読む
はずだ。(*は休符、|は小節の区切り)
 「なじられて***|*にじゅうさんじの|なまびーる***」
 (ここからは、五・七・五をそれぞれ「上五(かみご)」「中七
(なかしち)」「下五(しもご)」と呼ぶ業界用五を使わせていただく。)

 さて注目したいのは、上五・下五の最後の音「て」と「ル」が、
超強い3拍めアタマの「タ」のところにあたっていることだ。
8ビートの1小節の中で、最もハギレよく終われる場所である。
五音が好まれる理由は、そこにある。

 一方、中七は4拍をフルに使って次の下五につながる部分だ。
 ここでの休符の置き方は、句によって異なる。上掲句の
「にじゅう・さんじの」は3・4に分かれるので、頭に休符を
置くことでリズムが整う。これに対し、たとえば芭蕉の
「五月雨をあつめて早し最上川」なら、「あつめて・はやし」と
4・3に分かれるので、「早し」の後に休符を置くことになる。

 ここで、8ビートでなく4拍子で手をたたきながら、1回の
「パン」に2文字をあてはめて読むとどうなるか。
 上五・下五は「パンパンパン」と3回たたいて1拍休みが入る。
中七は4回たたいて、そのまま下五につながる。すなわち、
「パンパンパン*|パンパンパンパン|パンパンパン*」
となるわけだ。これはなんと、これまた日本人の大好きな
「三々七拍子」のうしろの部分にほかならないではないか。
だから、五・七・五は気持ちいいのである。

 俳句のリズム論はまだ半ばだが、残りは次回以降に譲ることに
して、自句開設でしめる。

 句の意味は、人からいわれなき批難を浴びせられて、
憂さ晴らしに夜中の11時からバーのカウンターでビールを飲み
始めた、という、どうということもないものだ。
 ただ、僕はこの句の「見た目」にポイントを置いた。

 俳句は基本タテ書きなので、「23」を半角文字で横に並べると、
1文字分のスペースに「にじゅうさん」の5音を担わせることが
できる。その結果、中七全体で3文字分、上五・下五より短く
なる。そのバランスが面白い、と僕は考えたのだ。

 ためしに「23」を漢字に変えて、
 「詰られて二十三時の生ビール」
としてみると、まったく印象が変わるのがわかるだろう。
「23」のほうが全体が軽くなり、「生ビール」という言葉との
相性もいい。

 そんなのは邪道だ、と繭をひそめる方もいるかもしれない。
しかし、詩を作るにあたり、表記にも様々な工夫をこらせるのは、
漢字にひらがな、カタカナ、さらにローマ字やアラビア数字など、
多様な文字を、文章の中でごく自然に使いこなせる、日本人の
特権だ。「見た目」の表現も、大いに冒険し、楽しんでいいのでは
ないかと、僕は思っている。

 もちろん、そのことと作品のデキは別問題だ。「見た目」も
ひっくるめてつまらん句だ、というご批判は、甘んじて受ける。
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